出会い編5
「さ、彩条院君。どうして…ここに?」
ドアが蹴り破られた時の雅紀の驚きは、卓実だと分かった瞬間に動揺と媚び、諂いに変わった。
「そいつから離れろよ」
雅紀の質問を完全に無視し、卓実はそう命令した。
嫌な沈黙が流れる。
たが、一分も経たずに、
「申し訳ありませんっ!!」
その空間の沈黙に耐えられなかったのか、取り巻きの一人が、そう言って沈黙を破った。
「雅紀様、俺が話したんです。そいつの下駄箱に細工をしている時に見つかって、雅紀様のこと、そいつにしたこと全て…。怖かったんです。見下す目に刺し殺されそうで…それでっ」
取り巻きの一人は、そう言ってその場に崩れた。
それを見て周りの取り巻き達も、みるみる逃げ腰になっていった。
なぜなら、崩れた男は雅紀の隣りにいるあの不良めいた男に次ぐ地位であったからだ。
そんな怯えきった男達を、
「消えろ」
卓実はたった三文字で散らせた。
ドアには取り巻き達が我先にと群がった。
卓実はただ数歩移動し、奴等を逃した。
しかし、その眼は怖い程感情を現さず、雅紀と縛られた朝輝を見ていた。
呆気ない幕切れ。
それが、朝輝拉致監禁事件を語るに相応しかった。
卓実が冷たい眼のまま雅紀とその側を離れぬ男に一発ずつ拳を入れて、それで終わり、だった。
奴等は逃げていき部屋には朝輝と卓実だけが残った。
「どうしてここに?」
そんな朝輝の質問には答えず、卓実は朝輝の戒めを解き始めた。
そして解き終えると、ようやく朝輝に人らしい視線を送った。
「俺が…怖いだろう」
卓実の眼はどこか哀しみを持っていた。
それはまだ朝輝の表情が恐怖に支配されていたからであった。
クズの行いと自らが、朝輝をここまで追い詰めたのだと思うと、卓実の心は抉られるような痛みを覚えた。
それでも卓実は、自らに沈黙を許さなかった。
「もし、そうだとしても俺はもう、お前を手放せない。あの時お前を抱き締めた時、そう決めた。俺は…朝輝、お前を傷付ける奴を殺したって構わない。…そして、俺の元からお前が離れて行くというのなら…」
そこまで言って、卓実はまだベッドに横になっていた朝輝の上に覆い被さり、朝輝に深い口付けを仕掛けた。
突然の口付けに動揺する朝輝の口腔を一しきり味わうと、卓実は朝輝の口を開放し、息乱れる朝輝に、
「お前を殺してでも、俺の腕の中にいさせてやる」
と、ようやく先程の続きを告げた。
それから先の事は、朝輝の記憶に殆ど存在していない。
ただ、そこで卓実と゛繋り″を持ったのは、確かな事実として覚えている。
まるで、そうなる事が運命だった様に、朝輝の身体は卓実の与える愛撫に順応していった。
それは、杭を飲み込む場所も例外でなく、舌や指で慣らされると少しずつ、確かに悦びを示した。
だが、朝輝はその行為に耐えられなかった。
卓実自身が入って来た時もう意識は無いに等しかった。
それでも、朝輝は受け入れた。
拒まず、確かに。
いや、朝輝は拒めなかった。
なぜなら、それが、゛繋り″が、その時すでに朝輝に絡み付いていたのだからだ。
もう逃さないと、いわんばかりに…。