出会い編4
朝輝は圭典と別れ、教室に戻り帰り支度をしていた。
がらんとした教室で一人帰り支度をする朝輝の頭の中は卓実の事で一杯になっていた。
なぜ、自分の名字を言わなかったのだろうか、なぜ、あんなに顔が歪んでいたのだろうか…。
朝輝は、出るはずのない答えを探して、卓実と話した僅かな時間を思い起こしていた。
その時、朝輝は何者かに背後から肩を叩かれた。
振り返るとそこには、見知らぬ生徒が二人立っていた。
「どちら様ですか?」
朝輝が眉を顰めながら質問すると一人が笑顔で、
「君にお願いがあるんだよ」
と言った。
「俺にものを頼みたいのなら、まず俺の質問に答えたらどうですか?」
そんな相手に朝輝は睨み付けながら言った。
すると、笑顔の生徒がもう一人のやや不良めいた生徒に向かって、こくりと頷いた。
すると、ゆっくりと朝輝に歩み寄り、
「何を…うっ…」
状況を把握していない朝輝の溝落ちに拳を入れていた。
朝輝が目を覚ますとそこは見知らぬ部屋だった。
広さ10畳程の所にはベッドと水差しとコップが置かれた小さな机があった。
そしてその部屋で朝輝は手足を縛られベッドに寝かされていた。
「おはよう、朝輝。手足痛くない?」
問い掛ける声に朝輝が頭を動かすと、あの笑顔の少年がベッドサイドに腰掛けていた。
「解けよ」
朝輝は少年を睨み付けながら言った。
すると、
「雅紀様に口答えするな!」
と怒鳴り声がした。
意識が完全にはっきりした朝輝はようやく少年の取り巻きの男達に気付いた。
「お前、もう一発腹に入れてやろうか?」
怒鳴った男が朝輝に近付いて来た。
その男は朝輝の溝落ちに拳を入れたあの生徒だった。
「止めろよ。朝輝はお前と違って可憐なんだ。今はちょっと虚栄心を張ってるだけなんだから。そうだよね、朝輝」
雅紀と呼ばれた少年はそう言って朝輝の髪に手を伸ばした。
だが、朝輝はその手を避け、
「馴々しく呼ぶな」
と言った。
すると雅紀は、笑顔のまま朝輝の首を片手で締め付けた。
「ぐっ…う、ぐっ…」
突然首を締め付けられ、朝輝の顔に苦悶の表情が浮かぶ。
そんな朝輝の首を締め付ける雅紀の表情は張り付いた様な笑顔だ。
「可愛くないなぁ」
笑顔のまま、雅紀は呟いた。
「朝輝は気付いてなかったかも知れないけど…君、僕を無視したんだよ。僕の好意を踏み躙ったんだ。だから、僕は君にお仕置をしたんだ」
笑顔のまま、雅紀は朝輝にそう言った。
朝輝は、思わぬところでイジメの犯人を知った。
「お前…だったの、か」
苦しさに涙を浮かべながら、朝輝は言った。
しかし、その声は雅紀には全く届いていなかった。
「でも不思議なんだよねー。三週間前位から誰かにお仕置を邪魔されるようになったんだよねぇー。その間に朝輝はすっかり学園に馴染んで、友達も出来た。僕の心を踏み躙って…ホーント、可愛くない」
雅紀は、朝輝の首からようやく手を放した。
苦しみから開放され、咳込む朝輝を見下ろしながら、雅紀は制服の内ポケットからナイフを取り出し、朝輝の頬に当てた。
「やっぱりちゃんと痛い思いをしなきゃ…駄目みたいだね」
そう言って、雅紀はナイフを下に移動させていった。
そして、ブレザーとボタンを断ち切った。
声も出ないまま、朝輝の顔が恐怖で引きつっている。
それでも、雅紀はボタンを衣服から断ち切っていく。
やがて、あらわになった肌を見て、雅紀の笑みは卑しいものに変わった。
しかし恐怖に支配された朝輝はその笑みにも取り巻きの男達の嫉妬の目にも気付けなかった。
「印、付けてあげるね。この身体に…たくさん」
そう言って、雅紀は恐怖に支配されている朝輝の身体に顔を近付けていく。
そして今まさに到達しようかという時、 バァーン
ドアが蹴り破られ、
「よぉ…」
冷たい、まなざしの、
「卓実…君」
彩条院卓実がいた。