出会い編3
「で、この公式に当てはめればいいんだよ」
「なるほど!ありがとう。助かったよ」
ノートを手に自分に笑顔を向けるクラスメイトに朝輝も笑顔を返した。
卓実に抱き締められたあの日は、もう三週間も前の事だ。
朝輝はようやくクラスに馴染み、うまく付き合えるようになった。
…だが、初めての友だと思った卓実とは、あの日以来顔を合わせていなかった。
「随分馴染んだんだな」
後からした声に朝輝が振り返ると、そこには都津谷圭典が立っていた。
「まぁね。都津谷のお陰だよ。都津谷は影響力強いからみんな話し掛けてくれるようになったんだろうし」
朝輝が、そう言うと、圭典は笑いながら首を傾げたが、朝輝はそう確信していた。
圭典の家は医者一族で、病院を経営している。
家柄でも、成績でも圭典は学園トップクラスであった。
「まぁ、どう思っててもいいが、俺は自分にプラスになるから親しくしているだけだ」
「分かってるよ。でも、あのままだとさすがにキツかったから」
朝輝の言葉に圭典は首を傾げた。
すると朝輝は苦笑しながら、
「イジメにあっててさ」
と言った。それを聞いた圭典は、
「くだらない」
と言って呆れ果てた。
朝輝は、
「暇なんだろ」
と笑って返した。
「ああ、影響力が強いと言えば、俺よりも彩条院の方が強いぞ」
放課後、残って勉強をしている最中に圭典がふとそんなことを言った。
朝輝が、誰か分からずに首を傾げていると、圭典が説明を始めた。
「彩条院は、平安から続く名家で、幅広く事業を展開している。で、その一族の次期当主がウチに通ってるんだ。殆ど授業はサボってるし、暴力事件を起こしたこともあるけど、絶大な権力があるからこの学園では誰も奴…彩条院卓実には逆らえないんだよ」
卓実、その名前が圭典の口から出た時、朝輝の中で卓実が自分の名を名乗った時の影像が流れた。
あの時は気にもしなかった。
卓実が名前しか名乗らなかった事も、…その顔が、酷く歪んでいた事にも…。