出会い編2
「…へぇ。お前が例のスカウト生だったのか」
出会った次の日の昼食時間に朝輝と卓実は屋上で再会した。
そこで朝輝の話を聞いた卓実はあまり興味がなさそうにそう言った。
「例の…ってそんなに俺のことって噂になってたの?」
少し驚いたように言う朝輝に、卓実は黙って頷いた。
そして、面倒だと言わんばかりに溜め息をついてから、
「この学園は、地位や名誉を持った奴等に、自分のガキが誰と競争しなくても他人に自慢させることが出来るようにだらだら歴史を重ねて来た。だが、この時代歴史や出身者だけでは、名門とは呼ばれない。だから必要だったんだよ。自分達の名声を確実に上げてくれる人形がな…」
と言った。
朝輝は、その言葉に、かなりのショックを受けた。
確かにこんな都合のいい話はきっと学園にも利点があるからだろうとは考えてはいた。
しかし、さすがに卓実の゛人形″という言葉はあまりにも受け入れがたいものだった。
思わず泣き出してしまいそうになるほどに…。
「っ…うっ…」
「おっ、おい…」
突然泣き出した朝輝をみて、卓実はまた昨日のように困惑してしまった。
それは、どうやって泣き止ませるかということと、今迄他人が泣こうと喚こうと何の感情も沸いてこなかった自分が、昨日会ったばかりの人間が泣いていることに困惑しているという状況にであった。
「…わ、悪かった」
混乱の中で咄嗟に謝罪の言葉が卓実の口から出た。
すると、朝輝はまだ瞳をうるませながらも微笑んで、
「大丈夫。ありがとう」
と言った。
そして次の瞬間、
「えっ…」
朝輝は、自分に何が起きたのが理解出来なかった。
「た、卓実君…」
そう呟いた朝輝は、卓実の腕に抱き締められ、卓実の胸の鼓動をただ聴いていたのだった。